研究 Research
生体由来Del-1分子に着目した炎症制御のメカニズム
好中球の遊走阻止とインテグリンを介した破骨細胞分化抑制能を併せ持つDel-1分子を,効率良く体内で作れるように指令を出すメカニズムを解明しています。
関連論文)
- Maekawa T, Hosur K, Abe T et al. (2015) Antagonistic effects of IL-17 and D-resolvins on endothelial Del-1 expression through a GSK-3β-C/EBPβ pathway. Nature Commun.6:8272
- *Shin J, *Maekawa T, Abe et al. (2015) Del-1 restrains osteoclastogenesis and inhibits inflammatory bone loss in nonhuman primates. Science Transl Med. 7(307:307ra155
図1 Del-1の好中球遊走阻止と骨吸収抑制機能の模式図
Del-1は好中球の血管の外への遊走を阻止する(左)とともに,好中球の2つの受容体を介して破骨細胞の分化と活性を同時に抑制する機能(右)を持つ。
図2 Del-1による歯周病治療法の可能性の検索
Del-1をマウス(上)とサル(下)に投与すると歯周病による骨の吸収(マウスの歯の根っこが見えている)と炎症(サルのはぐきの腫れと赤み)が抑制された。
神経系と免疫応答のクロストークが歯周疾患におよぼす影響の解析
歯周組織中に発現しているTRPチャネルタンパクが,歯周炎の発症・進行におよぼす影響を炎症反応・免疫応答・骨代謝に注目して解析を行っています。
関連論文)
- Takahashi N, Matsuda Y, Sato K et al. (2016) Neuronal TRPV1 activation regulates alveolar bone resorption by suppressing osteoclastogenesis via CGRP. Sci Rep. 6:29294
- de Jong PR, Takahashi N, Harris AR et al (2014). Ion channel TRPV1-dependent activation of PTP1B suppresses EGFR-associated intestinal tumorigenesis. J Clin Invest. 124(9):3793-806
口腔粘膜における酸素生物学の再生医療への応用
組織幹/前駆細胞は生体内で低酸素環境に存在していることが解明されています.生体口腔粘膜に類似した酸素微小環境を作成工程に反映させることで口腔粘膜上皮幹細胞の未分化性を維持し,高い品質をもつ培養口腔粘膜の作成を目指しています。
関連論文)
- Kato H, Marcelo CL, Washington JB et al. (2015) Fabrication of Large Size Ex Vivo Produced Oral Mucosal Equivalents for Clinical Application. Tissue Eng Part C. 21(9):872-80
- Kato H, Izumi K, Uenoyama A et al. (2014) Hypoxia induces undifferentiated phenotype of oral keratinocytes in vitro. Cells Tissues Organs. 199(5-6):393-404
顔面頭蓋器官発生を制御する転写ネットワークに関する分子細胞生物学的研究
先天異常疾患の約3分の1の症例は顎顔面領域になんらかの奇形を伴うことが報告されています.
組織特異的遺伝子改変マウスを用いて,それにより生じた顎顔面領域の奇形を分子細胞生物学的に解析し,顎顔面頭蓋器官発生を制御する転写ネットワークの解明を目指しています。
関連論文)
- Kawasaki K, Kawasaki M, Watanabe M et al. (2015) Expression of Sox genes in tooth development. Int J Dev Biol. 59:471-8
- Blackburn J, Kawasaki K, Porntaveetus T et al. (2015) Excess NF-κB induces ectopic odontogenesis in embryonic incisor epithelium. J Dent Res 94:121-8
顎口腔系の感覚受容機構に関する形態学的研究
歯はその発生過程からみると,皮膚に相当します.皮膚には鋭敏な感覚がありますが,歯も非常に繊細な感覚を受容する感覚装置が豊富に存在します.歯の感覚は歯髄の痛みと歯根膜の感覚にわけられます.私たちは歯髄や歯根膜など顎口腔に存在する感覚受容器の形やその発生・再生過程について、免疫組織化学や電子顕微鏡法などの形態学的手法で研究を進めています。
関連論文)
- Maeda T, Ochi K, Nakakura-Ohshima K, et al. (1999) The Ruffini ending as the primary mechanoreceptor in the periodontal ligament: its morphology, cytochemical features, regeneration, and development. Crit Rev Oral Biol Med. 10(3):307-27
A: ヒトの歯髄神経(p75-NGFRの免疫染色), B: 神経終末, C: 歯根膜のルフィニ神経終末
末梢神経可塑性に関する形態学的研究
歯科治療の偶発症である下歯槽神経損傷は予後が悪く,根本的な治療法が確立されていません。
私たちは下歯槽神経損傷モデルマウス・ラットを応用し,その再生メカニズムと病態の解明に取り組んでいます。